其の24 ジョン・レノンに捧ぐ


 本日は十二月八日である。この日はわたしにとっては特別な日である。勿論太平洋戦争の開戦記念日でもあるのだが、ジョン・レノンの死んだ日でもあるのだ。こんなところで雑文などを書き散らしているのでちょっとおかしな美青年だと思っている人も多いだろうが、実はわたしとジョン・レノンとは深い絆で結ばれた同志なのである。ただ精神的に結び付いているという輩は多いが、わたしの場合は年齢は離れているが殆ど友人といっても差し支えないような間柄であったのである。あの世界的に有名なカリスマ、ロックスターのジョン・レノンと友人と言われても信じ難いであろうが、本当のことである。話せば長いので端折るが、実はわたしの大学の先輩の友人の父上の友人がジョン・レノンなのである。略して言えば「友人のジョン・レノン」である。しかしこれは殆ど親戚に近いくらいの間柄であろう。因みに大学の先輩の友人の父上というのはリンゴ・スターである。これだけならわたしも友人などというわけはない。わたしはこんなことくらいでジョン・レノンを友人だと吹聴するほど恥知らずではないのである。更にわたしはジョン・レノンの友人が出演するコマーシャルの演出をした人と同じ業界にかつていた大学の先輩をもつ者でもあるのだ。そしてコマーシャルに出演したジョン・レノンの友人とはリンゴ・スターである。ついでに言えばわたしはジョン・レノンの出したアルバムは海賊版を除けばすべて持っているし、何曲かギターでコード弾き出来る曲も知っているのである。これほど関係の深い間柄をわたしは知らない。なんならポール・マッカートニーよりもジョン・レノンをよく知っていると言っても差し支えないほどである。であるからして本日十二月八日はわたしにとって特別の日であるのだ。
 それはさておき、ジョン・レノンも雑文の枕に使われるとは思っていなかったであろうが、それはともかく、最近寒い。わたしはどちらかというと熱がりの方で寒さには強いのだが、寄る年波には勝てず、ここ数年は異様に寒さに敏感になっている。しかし、気功ならず気候についての雑文を書き出したらネタも尽きてきたのではという疑いは置いておくとして、異様に寒い。原付バイクに乗ることもあるのだが、最近は寒いので近場なら歩くことにしている。歩くとほかほかするので寒さを感じることが少ないからである。異常気象ではないのか、そう思うほど寒い。それも十二月に入っていきなりであるから、体がついていかないのである。そう思って注意深くテレビの気象ニュースを見ていると思った通り異常気象であるらしい。毎年異常気象が来ている感もあるが、やはり見目麗しいアナウンサーに「今年は異常気象ですね」と語りかけられると、いやわたしに語りかけているわけではないのだが、「うんうん、そうだよな、今年は異常気象だよな」と妙に納得してしまう。そしてこの寒さにも耐えられるようにもなろうというものだ。尤も夏は夏で「異常気象ですね」と言われれば「おお、確かに暑いぞ、今年の夏は」と襟元過ぎれば暑さ忘れるという諺もあるように去年も同じ台詞を言っていたことを忘れて首肯くのである。人間は誰かに「あなただけ変だと考えていることではないんですよ、みんな不満に思っているんですよ」と言われると妙に安心する生き物なのである。
 さて皆を納得させる情報を与えたり、現状の凄さを伝える為の過剰な比喩はちょっとあれである。あれという表現を使いすぎている感もあるが、それはともかくあれである。いきなり寒くなった日、気象ニュースを伝えるアナウンサーが皆一様にこの寒さを伝える為に用いた情報がこれである。
「上空三十キロメートルあたり、マイナス二十度の冷気によって被われています」
 ちょっと待って欲しい。確かに寒そうだ。この寒さも納得出来る。しかしいくらマイナス二十度の冷気とはいえ、三十キロメートルも上空の話ではないのか。地上の気温にどれくらい影響があるものなのか説明してくれないのでは、その冷気の凄さが伝わってこないではないか。それに上空五十キロメートルではどうなのだ。上空三十キロメートルという地点は何か特別な何かがあるのか。この地点が最も地上の気温に影響しやすいのだとか、この地点の気温の微分を積分して和集合を括弧でくくってA=の形で表せば桶屋が儲かるとかあるのだろうか。わたしには解らない。それに微分も積分も和集合も桶屋も解らない。ほんとのところただ単に寒そうな気温の地点をあげただけではないのだろうか。疑ってしまう。それなら、
「ただいま大気圏を越えたところでは絶対零度です」とか、
「ただいま太陽付近では燃えるような暑さです」とかもありではないか。
 確かに気象業界の解放もあり、派手な気象ニュースを言わなければならないという理由もあるのだろう。しかし少なくともわたしなら、
「あと数日で霜柱が立ちそうですね」とか
「そろそろ、しばらく熱風をガラスにあててから車を発進させるようにしましょう」とか
「電気ストーブの四百ワットではそろそろ寒い季節です。八百ワットに変えてください」などと言われる方がその寒さにピンとくるというものである。わたしだけか、それは。
 しかしジョン・レノンの死んだ日になんだかんだ言って気候ネタというのも如何なものか。しかもタイトルを「ジョン・レノンに捧ぐ」とするとは。これじゃあまるでダイアナ泥棒のエルトン・ジョンではないか。それにどちらもジョンだというもなんだかねえ。
 関係ないが、知り合いの二匹の犬の名前が「ジョン」と「レノン」であることも何かの因縁なのかもしれない。

(追記)実はジョン・レノンの死んだ日は日本では十二月九日であり、アメリカでは十二月八日である。ということは太平洋戦争の開戦記念日とは一日違いであることが判明。恥をかいてしまった。 


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